レーザーのクラスとは?安全基準と作業時の注意点を解説

公開日:2025/11/07 最終更新日:2025/11/10
レーザー

レーザーは、ものづくりや医療、研究など幅広い分野で活躍する便利な技術です。しかし、その強い光は使い方を誤ると目や皮膚を傷つける危険もあります。安全に活用するためには、レーザーの種類や危険度を理解し、正しい知識を持つことが欠かせません。本記事では、レーザーの危険性と安全に使うための基本ポイントを紹介します。

レーザーの危険度を7段階で解説!安全に使うための基本知識

レーザーは、身近なプリンターやバーコードリーダーから、工場で使う加工機まで、さまざまな場所で利用されています。しかし、レーザーの種類によって安全性には大きな違いがあります。知らずに使うと、思わぬケガや事故につながることも少なくありません。ここでは、レーザーの危険度を7つの「クラス」に分けて、どんな特徴があり、どう注意すればよいかを説明します。

クラス1レーザー|もっとも安全で安心して使えるレーザー

クラス1レーザーは、すべての条件で「安全」とされているもっとも低出力のレーザーです。長時間見ても目を傷つける心配はありません。たとえば、家庭用のレーザープリンターやCDプレーヤーなどに使われています。

実際には中に強力なレーザーが入っていても、しっかり密閉されているため安全に使用できます。つまり、外から見たときに光が漏れたり壊れたりしていなければ、特別な対策は不要です。

クラス1Mレーザー|肉眼では安全でも拡大には注意

クラス1Mレーザーも基本的には安全ですが、双眼鏡や望遠レンズを通して見ると危険になる場合があります。光が拡大されて、目に届くエネルギーが強くなるからです。光ファイバー通信やレーザー速度計など、見えにくい赤外線を使う機器によく利用されています。

つまり「肉眼で見る分には大丈夫だけれど、光学機器を通すと危ない」タイプと覚えておくとよいでしょう。

クラス2レーザー|見える光なら反射的に目を守れる

クラス2レーザーは、人の自然な「まばたき反射」で目を守れる範囲の出力です。レーザーポインターやバーコードリーダーがこのタイプに多く見られます。まばたきは約0.25秒で反応しますが、この時間内であれば安全という基準です。

ただし、光をじっと見つめたり、わざと凝視したりすると危険です。普通に使う分には問題ありませんが、いたずらで人の目に向けるような行為は絶対に避けるべきです。

クラス2Mレーザー|拡大観察でリスクが高まるタイプ

クラス2Mレーザーは、基本はクラス2と同じようにまばたき反射で目を守れます。ただし、双眼鏡などで拡大して見ると危険になります。つまり「クラス2の拡大版」と考えればわかりやすいです。

普通の使い方をしていれば問題ありませんが、光が広がりやすい構造のため、観察機器を通して見ると出力が集中して危険性が増します。

クラス3Rレーザー|注意して扱えば安全な中間レベル

クラス3Rレーザー、ここから少し危険性が高くなります。短時間であれば目に害は少ないですが、直接ビームを見たり、反射光をのぞき込んだりすると危険です。レーザーポインターの中でも強力なタイプや、一部の測定機器がこのクラスに含まれます。

「慎重に使えば安全だが、油断すると危ない」という中間的なレベルです。製品には必ず警告ラベルがついており、取り扱い説明書の注意を守ることが重要です。

クラス3Bレーザー|反射光でも危険がある高出力タイプ

クラス3Bレーザーになると、光を直接見たり反射した光をのぞき込んだりするのは非常に危険です。場合によっては、目の損傷や皮膚の軽いやけどを引き起こすこともあります。出力の上限は0.5ワット程度ですが、反射光でもダメージを受けるほどのパワーがあります。

わかりやすいもので例えるならば、レーザーショーや工業用測定機などに使われていることが多いです。安全対策としては、レーザー防護メガネの着用や、照射範囲への立ち入り禁止が必要です。

クラス4レーザー|もっとも強力で危険な産業用レーザー

クラス4レーザーは、すべてのクラスの中でもっとも危険です。わずかな光でも目や皮膚を大きく傷つける可能性があり、素材を燃やすほどの出力を持っています。レーザー切断機や溶接機、マーキング装置などがこれに該当します。作業中は保護具の着用が必須で、可燃物を近くに置いてはいけません。

反射した光も非常に危険で、加工中の金属表面を見ているだけで日焼けのような症状になることもあります。ただし、これらのレーザーも密閉された装置に組み込まれていれば、外部からは安全に使えるでしょう。

たとえば、クラス4のレーザーを内蔵したマーキング装置でも、外からはクラス1製品として扱われることがあります。つまり「構造が安全なら、強力でも安全に使える」というのがレーザーの基本です。

レーザーの危険性を正しく知って安全に使おう

レーザーは、その便利さの反面、レーザーは扱い方を間違えると大きな危険を伴うものでもあります。先ほども少しふれましたが、目や皮膚への影響、さらには火災のリスクまであることを知っておく必要があります。ここでは、レーザーによる主な危険と、その予防方法について見ていきましょう。

レーザーが目に与える危険とその理由

レーザーによるケガの中でもっとも危険なのは、目へのダメージです。ほんの一瞬でも光が網膜に届くと、取り返しのつかない視力障害を引き起こすおそれがあるのです。人の目は光を集める仕組みになっており、角膜と水晶体がレンズのように働き、光を網膜の一点に集めます。このときレーザー光が入ると、非常に小さな部分に強いエネルギーが集中してしまいます。

特に問題となるのが「赤外線」と「紫外線」です。赤外線レーザーは目に見えないため、危険を察知できません。光を避けようとする反射反応も働かないまま、網膜を焼いてしまうことがあるのです。

また、400nm以下の紫外線レーザーは、長期的に白内障などを引き起こす可能性があります。このような事故を防ぐには、作業時に必ずレーザー専用の保護メガネを着用することが大切です。

保護メガネはレーザーの波長ごとに吸収できる範囲が異なります。たとえば、1,064nmのファイバーレーザーを扱う場合、その波長を遮断できる専用のゴーグルを選ぶ必要があります。正しいゴーグルを使うことが、目を守るためには欠かせません。

皮膚にも起こるレーザーの影響と予防策

レーザーの光は目だけでなく、皮膚にも危険を及ぼします。出力が高いレーザーに直接触れたり、反射した光が肌に当たったりすると、やけどのような損傷が起こります。特にクラス3Bやクラス4のレーザーは、わずかな反射光でも皮膚を傷つけることがあるでしょう。

なお、レーザーによる皮膚の損傷には2種類あり「熱的な火傷」と「光によるダメージ(光化学的損傷)」です。熱的な火傷は、強い光が一点に集中して瞬間的に高温になることで起こります。

一方、光化学的損傷は、日焼けのように長時間浴びたことで皮膚の細胞がダメージを受けるタイプです。どちらも痛みや赤みが出るだけでなく、重症になると跡が残ることもあります。

また、レーザー機器の周囲に金属や鏡などの反射しやすい物体があると、光が思わぬ方向に跳ね返る危険があります。そのため、作業環境では、レーザー光を反射させない素材を使用し、露出した肌を保護することが重要です。

薄手の手袋や長袖の作業着を着るなど、物理的な対策も効果的です。被害が起きないよう、機器の出力や照射範囲をしっかり確認し、安全な距離を保つことが大切です。

火災リスクを防ぐための安全管理と注意点

レーザーの危険は、人への直接的な影響だけではありません。強力なレーザーは、作業環境そのものを危険にすることもあります。特にクラス4レーザーは、可燃物を発火させるほどの高出力を持ちます。加工中の金属やプラスチックの表面から反射した光が、近くの紙や布に当たるだけでも火がつくことがあるのです。

そのため、作業場には燃えやすい物を置かないことが基本です。また、レーザーを使う装置は必ず専用のカバーや密閉構造で囲い、外に光が漏れないようにしましょう。さらに、火災防止装置や消火器の設置も欠かせません。万が一火が出てもすぐ対応できるようにし、作業者全員が安全ルールを共有しておくことが求められます。

レーザーは便利な技術である一方、扱い方を誤れば命に関わる危険を生むこともあります。安全に使うための一番のポイントは「危険性を理解したうえで正しい対策を取ること」です。

レーザーの特性やクラス分けを知り、保護具や設備を適切に使えば、事故は確実に防げます。便利で強力な光を、安全な技術として生かすために、日々の作業でも油断せず注意を払いましょう。

レーザーを安全に使うために知っておきたいこと

レーザーは便利で精密な技術ですが、使い方を間違えると大きな事故につながるおそれがあります。そのため、世界中で安全に使うための「レーザー標準(規格)」が定められています。レーザー製品を購入する際は、この標準を理解しておくことがとても大切です。

安全の基準となるレーザー標準とは

レーザー標準が作られたのは、出力が低いレーザーでも人の目や皮膚を傷つける危険があることがわかったのがきっかけです。こうした標準は、健康被害や火災を防ぐために、レーザーの出力や種類に応じた安全対策を定めています。

代表的な国際基準は「IEC 60825-1」で、世界中で使われているもっとも重要なルールです。北米では「ANSI Z136」が同じ役割を持ち、アメリカではFDA(食品医薬品局)がレーザー製品を法律で管理しています。

これらの基準には、レーザーのクラス分け、安全ラベルの表示方法、反射光や拡散光の危険エリア(公称危険ゾーン)の定義などが含まれています。つまりレーザー標準は「どこまでが安全で、どこからが危険なのか」を明確にし、正しく扱うための共通ルールを示しているのです。

レーザー購入前に知っておきたいこと

レーザーを導入する前にまず確認すべきなのは「その製品がどのクラスに分類されているか」です。クラス1のように安全なものもあれば、クラス4のように非常に危険なものもあります。さらに、製品が国際規格(IEC 60825-1やANSI Z136)に準拠しているかどうかも重要です。

安全基準に沿って設計されたレーザーであれば、ラベルや取扱説明書に必ずその旨が記載されています。もし、その記載がなかったり、不明なメーカーの製品だったりする場合は、使用を避けるのが賢明です。さらに、作業環境にも注意が必要です。

レーザーの反射を防ぐため、鏡面素材の近くで使用しないこと、必要に応じて防護メガネを着用することも忘れてはいけません。レーザーを安全に使うための第一歩は「買う前に正しく選ぶこと」です。

信頼できるメーカーの製品を選び、標準に沿った安全管理を徹底することで、安心してレーザー技術を活用できます。

まとめ

レーザーは、私たちの生活や産業のさまざまな分野で役立つ一方で、使い方を誤ると重大な事故を引き起こす危険もあります。安全に使うためには、レーザーのクラスや危険性の違いを正しく理解し、作業環境や使用目的に合わせた安全対策を取ることが欠かせません。保護メガネの着用や反射防止対策など、基本的なルールを守るだけでも事故は防げます。便利で強力な技術だからこそ、正しい知識と意識を持って安全に活用することが大切です。

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イメージ引用元:https://www.tokyo-chokoku.co.jp/引用元:https://www.keyence.co.jp/products/marker/laser-marker/引用元:https://www.gravotech.jp/
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